Episode No.1294(20021017):わかる時は来るか?

「われわれは、長い山道を
 汗を流して歩いたあとにありついた
 一杯の冷たい井戸水に酔うように、
 その澄明さに酔うのである」

三島由紀夫は『作家論』の中で
森鴎外の作品について、こう言っている。

神童、三島でさえ・・・
「若い時は、その良さがわからなかった」
ことがある。

若いとは言っても十代のことで
二十代には、もう充分理解していたようだけど。

わからいことは、その時点で罪とは言えないが・・・
わかろうとしないことは怠惰である。

わからないことが
未来永劫わからないままでないのと同じで
わかっていたはずのことが
わからなくなることも時にはある。

一日生きれば一日分・・・
誰しも何かが変わるはず。

大人が何でも知っているわけでもないし、
給料は無条件で増え続けるものでもない。
だけど・・・
子供はずっと子供のままではいてくれない。

最近、うちの社内で流行っている言葉がある。

「知らないと損をするが・・・
 知っていると怖い」

もちろん、借金の話・・・だ。


参考資料:「作家論」三島由紀夫=著 中公文庫=刊