Episode No.1196(20020625):生まれた時代が悪かった?
久しぶりに『歴史の意外なネタ366日』から・・・
フランスの詩人、ボードレール。
問題作『悪の華』を出版したのは、
今から、ちょうど145年前の今日・・・
1857年6月25日だったそうだ。
初版は、わずか1,320部。
・・・にもかかわらず、
掲載されていたいくつかの詩が論議を呼んで
2週間後には発禁。
その後、裁判騒ぎにもなって
結果、6編の詩の削除と罰金が科せられた。
有罪の理由は・・・風俗壊乱。
145年も昔の話だから
今から見れば、どってことない表現だったに違いない。
わずか60年前の戦時中と今でさえ
許される表現は大きく違うんだから、ね。
ボードレールの『悪の華』は
近代人の孤独を赤裸々に表現し、
その後、象徴派の詩人たちに大きな影響を与えた。
つまり、ボードレールにしてみれば・・・
本当のことを正直に書いただけ、だろう。
それだけ、本当のことを表現するのは難しい。
有罪から92年後の1949年5月・・・
最高裁判所の判決で、無罪の判断が下されている。
だが、多くの芸術家と同様に・・・
ボードレール自身は、自らの名誉が回復したことを知らない。
『悪の華』発禁から9年後・・・
1866年に激しい発作を起こした挙げ句、失語症となり
翌1867年にパリの慈善病院で息を引きとっている。
享年46歳。
「詩人は似ている。この雲上の王子に。
荒天を往来し、射手を嘲りはするものの、
地上に追われて、罵声に囲まれれば、
巨大な翼も、歩く邪魔になるばかり」
・・・アホウドリ『悪の華』より
生まれた時代が悪かった。
でも、本当にそう言えるのは・・・
戦争を体験した子供と、
歴史にその名を刻める芸術家だけじゃないかな。