Episode No.1182(20020608):理由が解決策にならない理由

情熱的な瞳を輝かせながら・・・
若い女は、相手の言葉を封じるように言った。

「なぜ、理由が必要なの?」

老紳士は乗り出しかけた肩を落として
視線を遠くに移しながら答える。

「理由がわかれば・・・幾分、心が安まる」

チャップリンの異色喜劇『殺人狂時代』の一場面。

昔観た映画も・・・
ある程度、年齢を経てから観ると
また見方が変わるね。
昔は、こんな場面・・・気にも止めなかった。

仕事をしていると
なぜ、そうなのか・・・理由を聞かれることが多い。
理由をうまく説明して
相手に納得してもらえないと
仕事は思うようにはかどらない。

とくに営業の仕事は
キチンとした説明ができるか、できないかがポイント。

でも・・・
そこでできることは、本当を言うと・・・
やっぱり相手に幾分の安心感を与えるだけなんだよね。

わからないことへの不安を少しでも和らげる・・・
それ以上でも以下でもない
・・・それが理由の役割。

『殺人狂時代』で放浪者スタイルを捨てたチャップリンは
リストラされた銀行員。
家族を養うために・・・
中年女性を騙して殺害しては、金を取る。

理由なき殺人に比べれば、動機はわかるけど・・・
たとえ理由がわかっても
それだけで・・・問題は解決できない。

理由に対して、どうするかが・・・解決の道なんだ。


参考資料:「殺人狂時代」製作・監督・脚本・音楽・主演=チャールズ・チャップリン 原案=オーソン・ウェルズ