Episode No.1064(20020122):行動力とわがまま/自信と自惚れ

「思い立って、すぐ行動に移す人間を
 必ずしも実行力があるとはいえないのだそうである。
 むしろ意志薄弱で、自己制御がきかないのだという。

 行動力があるなどといわれて
 いささかうぬぼれていたわたしは、
 実は意志薄弱人間なのだと、思い知らされたのである」

・・・こんな三浦綾子の文章に、ドキリとした。
まるで自分のことを言われているようだ。

自己を表現してみたい、なんて思う人間は
多かれ少なかれ、どこかに自惚れの気持ちがあるもの。

たとえ、自分の弱さを正直に表現しようとしても
そこには、どこか、
そんな自分を肯定したい気持ちが見え隠れしてしまう。

それは、それで・・・
なけなしの自信を何とか維持しようとする
健気な姿でもある。

同じような気持ちでいる仲間と出逢えれば、
なお気持ちも和らぐ。

手にする本も、普段はどちらかと言えば・・・
何とか、こんな自分を正当化してくれる偉人はいないかと
探しているようでもある。

そんな中・・・
冒頭の文章に出逢って、ふと立ち止まる。

では、本当の実行力、行動力とは、いったい何だろう?
単純に言うなら・・・わがままとの違いは何か?

答えは見えている。

つまり・・・
自分のためだけでなく、誰かのためになる行動であれば
それは、わがままではないだろう。

自己犠牲という暗いイメージでは決してない。
他人の喜ぶ顔を見ることが自分の喜びになる・・・
その境地に達すれば、何事も楽しいし、
自分が生きている価値も見いだすことができるだろう。

問題は・・・
その答えに、どうやって到達するか?
人生には確実な方程式というものがないことだ。

自惚れないこと。
どうせ惚れるなら、誰か、あるいは何かに惚れて
そのために一生懸命やってみる方が、
答えに近づける・・・かもね。


参考資料:「言葉の花束」三浦綾子=著 講談社文庫=刊