Episode No.1059(20020116):わからないクセに判断だけするな

自分が何をすればいいのか・・・わからない時がある。
若い時は、往々にしてそうだ。

自分に何ができるのか?
何に向いているのか?
どうすれば食いつないでいけるのか?

誰も自分の能力を求めてはくれていないし
自分自身、いったい何をやりたいのかもわからない。

つまるところ・・・
何がわからないのかさえ、わからない。

そういう境地に立つ時は・・・
まだ、何もできないし・・・まだ、何にも向いていない時。

わからない内容を質問するのにだって、
必要最低限の知識や常識はなければならない。
いわば、まだそこまでも行っていない・・・段階なんだ。

昔「機械屋」と自称している、ある会社の社長と面談をした。

その人は長いこと、家庭用品を製造する会社に勤めていて
いくつもの工場プラントを設計・稼働させたベテラン中のベテラン。

たとえライバル会社の製品でも・・・
その製品をジックリ眺めて、5分もあれば、
その製品を製造するラインの図面を引ける、と豪語していた。

つまり、その5分間で・・・
製品がパーツごとバラバラになったカタチを想像し
どのパーツをどんな装置で作り、
製造ラインのどこに設置するのが最も確実で合理的がかわる、らしい。

さらに現実問題として・・・
そのパーツや製法について、どの会社が特許を持っていて
製造装置はどのメーカーに発注すればいいのかも当然、頭に入っている。

素人に製品を見せて、そんな立案を求める者はいないが・・・
もし素人が尋ねられたら、
どんなにアイデアだけあるふりをしても
いったいどこから仕事にかかっていいのかさえ、わからないだろう。

わからない時は・・・
そういう、わかる人を徹底的にマークして
どんな風に仕事をしているのか盗むしかない。

その仕事が自分に合っているかどうかなんて・・・
仕事の内容もわからない人に判断できるはずないんだから。

最後にチャーチルの言葉をふたつ・・・

「一番すんなりいきそう道を選んで問題を解決することが
 楽そうに見えるものだ。
 この安易な道が、結果的には最も厳しく、最も苛酷な道になる」

「青年であれ、娘であれ
 若い時代に成功運がないといって落胆してはいけない。
 勤勉かつ誠実に頑張り通して、失われた時を取り戻すのだ」


参考資料:「チャーチルの強運に学ぶ」ジェームズ・ヒューズ=編著 渡部昇一・下谷和幸=訳 PHP=刊