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Fictional Talk No.045(000409)
架空対談 
大衆とは

M「ある意味でね。本当にある意味でだが、あなたと私は似ているところがあるかも知れないな」

G「失礼だが、私のことは博士と呼んでいただきたい。それに似ているのは何もあなたのところだけじゃない。私が実践したことは、その後、あらゆる組織が模倣したのさ」

M「確かにそういう面もある。私もよくマスコミは活用させてもらったし、広報機能の重要性は折に触れて社員たちにも伝えてきたつもりです。下手に隠すと噂が広まる、どうせなら利用しろとね」

G「私はごらんのように足が悪い。兵役にもつけなかったし、恋にも破れた。それで劇作家をめざしたんだ」

M「あなた、いや博士は軍隊経験がなかったんですか? 私はね、いわゆるエリート将校でしたよ。だけどね、戦争に敗れた国のエリート将校なんて屁の役にもたたん」

G「大学に残って博士号をとるまでは何とか生活できたがね。劇作家なんかで食える時代じゃなかったから、銀行勤めもしたがね。すぐにクビだ。しかし、その後に運命の出逢いが待っていたのさ」

M「私にもね、運命の出逢いがありましたよ。人生はやっぱり縁ですね」

G「画家くずれの男と劇作家くずれの私は、実にいいコンビとなった」

M「うーん。いいコンビねぇ・・・それはどうかな? 最も私は他人や政府のことを批判するよりも自分にできることは政府にかかわりなく実行する主義だが」

G「主義は大切だ。大衆は魚が水を必要とするように、センセーションを必要としている」

M「欲がない、好奇心がない人間に用はない。欲があるから人間は進歩する」

G「あなたもその欲を利用した口だね。宣伝それ自体には原則的な法則はない。それには、ただひとつの目的があるだけだ。大衆の獲得。この目的に役立つなら方法は何でもいいんだ」

M「何でもいいは言い過ぎじゃあないかな。大衆は決してバカじゃない。だから納得してもらえるだけの技術が必要なんだ」

G「大衆が求めるものは、つねに現代的で熱狂的なスタイルだ。それをどんなカタチで目に見せるか、大切なのはそこだけだ」

M「そりゃあ能力、技術があっても商品にして売って儲けなければ会社は潰れる。ブランド・イメージも大切だ。しかし、未来の世の中にとって必要なものだからこそ、大衆は受け入れてくれる」

G「優れた判断は我々がおこなえばよい。が、むしろ自ら判断をしようという者ほど洗脳しやすいがね」

M「黙っていれば安全だという雰囲気は非常に危険だ。あなた方が作った世界など二度とゴメンだし、これからの時代に一番大切になるコミュニケーション・テクノロジーの種は私が植えてきた」

G「はたして現世の人間は、それを使いこなせますかな?」

M「もちろんだ。誰もあんたのように自分で6人もの自分の子供を殺して自殺するようになりたいとは思っていないだろうからね」


M盛田昭夫(元ソニー名誉会長)1921-1999 享年78歳
Gパウル・ヨーゼフ・ゲッベルス(ナチス宣伝相)1897-1945 享年47歳


参考資料:「盛田昭夫語録」盛田昭夫研究会=編 小学館文庫=刊
     「ゲッベルス」平井正=著 中公親書=刊

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