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Episode No.321(990906):最後の質問

「ねぇ、これなぁに?」「え? 何で?」
子供といっしょに過ごしていると、とにかく質問ぜめにあうことが多い。

正直言って、答えるのが面倒になることもないことはないが・・・。
ここは親として、また身近な人生の先輩として、答えないワケにはいかない。

相手が子供だと思って、適当に答えていると、子供はそのまま適当に覚えてしまう。
もっと怖いのは、適当に接しているという態度を見透かされてしまうコトだ。

さて、生涯に5,048巻の大蔵経を書き残したと言われるお釈迦様は、大勢の弟子たちから、いつも質問ぜめにあっていたという。

質問の内容は、おおかた人の生きる道について。
十人十色の人生について、ひとり一人の話をよく聞いて、懇切丁寧に答えていたというからスゴイ。

それが釈迦の生きる道・・・であったと言えば、それまでだが、何より自分に厳しくなければ、とてもできるコトではない。

そんな釈迦にも、ひとつだけ答えない質問があった。

それは「人は死んだら、どうなるのか?」・・・という内容の質問。

この世に生を受けて以来、誰しもがいずれは直面する大問題であるにもかかわらず、釈迦はその質問だけには答えようとしなかった。

ある時、意地悪な・・・あるいはとても純粋な弟子のひとりが、こんな質問をした。

「どうして人は
死んだら、どうなるのか?・・・という質問には答えないのですか?」

釈迦は、その質問に対して、このように答えたという。

「私の教えは、生きるための・・・生きている時の教えだ。だから死後については答えない。・・・死んだ後のことには関心もない」

生きている時に死んだ後のことを考えるのは無駄。
今できることを最大限にやり通すのが、やはり人が生きる道・・・というワケだ。


参考資料:「生きるヒントになる名語録728」轡田隆史=監修 橋本一郎=著 三笠書房=刊

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