Episode No.5209(20150429):[日記]Diary 鯉心 女王との密会は決まって薄暗い沼地だった。 初めて出逢った時、 やがてその光るものが、 黄金色に輝いた全身、 以来、機会あるごとに沼地を訪れ、 かといって女王は、 数年通っているうに、 出逢えた時はずっとその場所を回遊している。 鯉になる前は 4月も終わりに近づいた或る日、 案の定、そこにはミズスマシの姿しかなかった。 早々に沼地を後にして、 すると、散歩コースに作られた橋の下に、 もしや…と思ったが、その中に女王はいた。 橋から湖面までは2メートルを切る近さ。 いつもは少しお高くとまって見える女王は、 もちろんシャッターを切りまくった。 それでも、女王はすぐそこにいる。 やがて、これまでとは違う感情に気づいた。 ここまで、あからさまに全身を見せつけられると 実に勝手な感情であることはわかっている。 散歩コースには年配のカップルや 沼地では、まず滅多に人に会うことなどないのに。 近所のおばちゃんだろう、 鯉たちは重なるようにして群がると、 黒い鯉や白い鯉、 そして…そこにいるのは女王ではなく、ただの鯉。 池に背中を見せた自分に、 勝手に女王に祭り上げて、 …はい、ごもっとも。 だから…人生、日々更新。 Copyright 1998-2015 digitake.com. All Rights Reserved. |
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