今日こそ逢える気がした。

繰り返し足を運んでいるうちに、いつもの土手は、
ため息をつくために上がるような感じになっていたが、
今回は、何かが違った。

引き寄せられるかのように、まず
土手の下の沼池に近づいてみた。

いつもと同じ静けさ…と思いきや、
水面を何かが跳ねた。大きなは目が広がってゆく。

魚がいる。
いない時には一匹も姿が見えないこの場所に魚がいる。

この場所に魚がいる時、その群れは、
この夏、補習された向こうの橋の下にいる群れとは違う、
かなり巨体の一団である。
その中に…彼女もいるはずなのだ。

高鳴る胸を押さえて土手を上がる。
そして、
いつもは真っ暗な水の中にきらめくものを発見した。

まるでレースのドレスをまとったようなこの沼の女王は、
優雅に大きく円を描いて泳いでいた。

ほかにも何匹か大きな鯉はいるのだが、
水底の暗さが保護色となって、よく見えない。
が、全身金色に輝く彼女だけは、うす暗い水中でも、
はっきりとその姿を確認することができるのだ。

…つづく。