その作家は、最新作に作家生命を賭けていた。
この作品が売れなければ、もう筆を折る覚悟だった。

この大河ドラマには、持てる力のすべてを注いだし、
もしも、これが最期の一作となろうとも悔いはなかった。

覚悟は充分できているはずだったが…
いざ、出版社に売れ行きを尋ねるのには、
相当の勇気を要した。

言葉を操ることが商売の作家にして、
はたして出版社の担当に、何と尋ねていいやら、
言葉がまるで思いつかない。

ようやく書けた手紙には、たった一文字…「？」。

やがて出版社から届いた返事を
作家が恐る恐る開くと、
そこには、やはりたった一文字…「!」。

「？(売れてる？)」、「!(売れてます!)」

後に、このやりとりは…
世界一短い、手紙のやりとりと言われた。

手紙を書いたのはフランス人作家、ヴィクトル・ユーゴー。

彼が作家生命を賭けて1862年に出した
この作品のタイトルは…「レ・ミゼラブル」。

話題の映画「レ・ミゼラブル」を観てきた。

50歳を迎えて一番得をしたのは、
夫婦で映画に行くと、
いつでも一人1,000円で入れるようになったことだ。

舞台のミュージカルには違和感は覚えないが、
映画の、実景の中に観るミュージカルに、
正直ちょいと違和感を覚えてしまうのは
…私だけではないだろうと思う。

輪唱する三角関係…とか、ね。

にもかかわらずこの映画が、たいそう評判なのは、
鍛え抜かれた俳優たちの
一流の演技に圧倒されるからじゃないかな。

みんな「凄い」ものを観たいんだ。

だから、自分が誰かの注目を浴びようと思ったら、
やっぱり…凄くなきゃいけない。

ありのままの自分では、誰も振り向いてくれない。
…親以外、はね。

だから…人生、日々更新。