精神科医の香山リカさんが
クリエイターの日比野克彦さんに
対談でこんな質問をしていた。
「或る芸術家が自分の血で絵を描いた。
その血を絞り出すところを見せながら。
これが美術館の中でなく外だったら、
すぐに救急車を呼べ
…っていう騒ぎになりますよね。
同じように美術館の中だから
許されることってありますよね?」
日比野さんはアッサリと、こう答えた。
「あります。ほとんど犯罪みたいのもね」
芸術だから何してもいい
…っていう考え方は嫌いなんだ。
だから自分を芸術家だという人にも
反射的に眉をひそめてしまうことがある。
一方…作品を観て、こちらが勝手に、
これは芸術だと思うものの作者に限って、
自分は職人だ、なんて言っていたりする。
ひっとしたらクリエイターの側にも
芸術に逃げてはいけないという意識が
あるのかもしれないね。
とくに自分を鍛錬しようとしているクリエイターはね。
ありのままの自分を見てほしい
…なんていうのは、やっぱり犯罪に近いよな。
いい悪いじゃなく、
社会はルールによって成り立っているのだから。
そのルールを変えようとするのなら、
ルールに乗っ取った上でやらないと
テロになりかねないし、支持もされにくいだろう。
ありのままの自分を愛してほしい
…なんていうのが、
努力のないワガママ者の言い草であるように、ね。