Episode No.4124(20111110)[偉人]Great man

愛を描く
Maurice Denis 1870-1943

モーリス・ド二の絵画には
通常の画家の作品に見られるものが少ない。

それは…サインだ。

もちろん、サインをした作品もあるが、
小さな活字体で書かれた文字は
誇らしげなサインというより、
記録のためのメモのようでもあるし…
朱印のようなマークが描かれている場合もあるが、
まるで恥ずかしさのあまり戯けて見せたようでもある。

絵画に限らず
芸術家がサインをしない作品というのは、
習作であったり、失敗作であったりするものが多い。

…が、ドニの作品においては、
完成された作品であり、失敗作でもない。

では、何故サインをしていないのだろう?

想像するに、ほとんどが家族のスナップであり、
売る気などさらさらない作品ばかりだから
…ではないだろうか。

それが証拠にドニ家のリビングを写した写真には、
ソファーでくつろぐ
ドニやドニの妻をはじめとする家族たちの後ろには、
壁一面にドニが描いた家族の肖像が飾られている。

いったいこの子だくさんの画家は、
どうやって稼いで家族を養っていたのかが
実に不思議に思えてくる。

ドニの家族への愛がいかに深かったのかは
彼の作品を見れば一目瞭然だけれど…
ドニの作品展に陳列されていたものの中で
最も驚かされたのは、
ドニが病死した先妻に送った金の首飾り。

その首飾りには宝石の代わりに
自分の子供たちの抜けた乳歯が装飾されていた。

勝 新太郎が母親の葬儀で
母親の遺骨を食べたことを思いだした。

愛は、つねに他人の理解を超えている。

故に本当の愛は…本人にしかわからない。

だから理解されることと、愛することは、
…本来、相反しているのかもしれない。

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