Episode No.3556(20100118)
下積み時代

20代前半の若き指揮官は
大抜擢の打診に色めき立った。

これで、いよいよ
自分の力を示せる時が来た

しかし…
派遣された戦地は泥沼化しており、
引き受け手のない仕事を
若い指揮官に押しつけたともとれる。

加えて現地で彼の上司となった司令官は、
一人目は元画家で、二人目は医師。
幼い頃から軍人教育を受けた
若き指揮官にとっては、
何とも頼りない上司たちだった。

しかも、
元画家や医師だった司令官たちは、
一向に若い指揮官が進言する作戦を
認めようとはしなかった

職業軍人である若き指揮官にとって、
どんなに無駄だと思っても
…司令官の命令は絶対である。

一介の兵士でさえ、
繰り返される無駄な作戦に
嫌気が差す者も大勢いた。

だが…
自分たちの直接の上司である若い指揮官が
現場の先頭に立って汗を流す姿に感銘し、
それに従うことで何とか士気を維持する。

上司に逆らうわけでなく、
懸命に働くことで現場の信頼を得るようになった
若き指揮官に本当のチャンスが訪れたのは
3人目の司令官が赴任してきた時。

生粋の軍人だった新しい司令官は
若き指揮官の作戦を採用し、
みごと泥沼化していた紛争を勝利で飾った。

…これが、若き指揮官が「英雄」となる第一歩。

「英雄」といえば…ナポレオン・ボナパルト
…24歳の頃の話である。

35歳でフランス皇帝にまで登り詰めた
超スピード出世したナポレオンにさえ
…不遇の時代はあった。

およそ歴史に名を刻む偉人たちの中で、
不遇の時、下積み時代のない者はいない

下積み時代ま苦しみを
自分の都合や理屈でねじ曲げて
逃げ出してしまう程度の人間が…
偉人になった試しもなければ、
周囲の信頼を得ることすらできやしない、ね。

参考文献「世界の伝記・ナポレオン」木村尚三郎=監修/集英社=刊


| 人生日々更新 | 最近のBacknumber | 架空対談 | 教育論 |