Episode No.3300(20090325)
架け橋という仕事

文学
自分の内なる世界と
外の世界をつなぐものだとすれば…
いわゆる普通の仕事は、
物と人をつなぐもの。

それから…
人と人をつなぐ仕事というのもある。

或るPR誌で、こんな記事を読んだ。

カリフォルニアにある
インド人が運営するレストランの話。

このレストランのメニューには
値段が出ていない。

食べ終わった後、渡される封筒には…
貴方の食事代は前に来た方がプレゼントしてくれました。
貴方は次の方のために、いくらかプレゼントをしてください。
…というような主旨のカードが入っていて、
支払えるだけの気持ちを封筒に入れて渡す、らしい。

コック以外は全員ボランティア。
中には楽器を持ち込んで
無料で演奏をする人もいるらしい。

何て素敵な空間…とも思うけど、
これで成り立つのか、と心配にもなる。

実際のところ、
この運営者の一番の仕事は
食事を出すことではなく…
こうした主旨を理解してくれる金持ちと
食事にも困っている貧困層との
架け橋をすることなんだろうと思う。

普通に生活していれば、
金持ちは金持ち同士。
貧困層は貧困層同士のコミュニティしか持たない。

そこに人生に対する勘違いが起こる。

限られた範囲の中では到底知ることの出来ない
人生の深みのようなもの、
あるいは肩書きを越えた人との出逢いが、
このレストランにはあるんだろう。

ボランティアも
賃金以外の何かを受け取ることを目的に
ウエイターやウエイトレスになりきって働く。

架け橋となる仕事は
同時にマドラーのような仕事なのかもしれない。

分離してしまった液体を
グルグルかき回するような。

不用意に混ぜ合わせると
爆発の危険さえあるかもしれない。

しかし、うまく調合すれば
新しい魅力的な味が生まれる。