Episode No.1267(20020916):プロの落とし穴

この週末は珍しく早起きして・・・
大工仕事に励む。

このところカミさんから
夜中に大工仕事をするのは近所迷惑
・・・と釘をさされたせいもあって。

本職の大工を脇目に作業をするのは
少々気が引ける。

早速、棟梁が「何作ってるの?」と
覗きにやってきた。

見よう見まねで作っている物置は
本職に見られるのは恥ずかしい限り。

「こりゃあ大変だ」と笑う棟梁が
「材料費もかかるでしょう?」と聞くので
近所のDIYショップの話になった。

木材は確かにDIYだと表面加工されている分、割高。
しかし・・・
「12mmの石膏ボードが1枚298円」
と言うと、棟梁は目を丸くした。
「ウチら、100枚単位で買っても500円はするよ」
品物が違うのでは?・・・いや、同じだ。

違うのは・・・流通。

建築資材専門店には
営業もいれば、配送専門の社員もいる。
DIYは置いてあるだけ。
だから安い。

ちなみに、そのDIYでは
しばしば本職の人たちが買い物する姿も目にする。

大工に限らず、長いこと同じ業界にいると
その業界での常識にしばられてしまう、ということがある。

私の叔母は長いこと舞台の衣装を縫う仕事をしているが・・・
ある日、デザイナーから渡されたスケッチを見て首をひねった。
「こんな材料ありません」
すると、デザイナーはあっけらかんと、こう答えた。
「水道のホースを使えばいいじゃない?!」
それまで何百着もの衣装を手がけてきた叔母の頭には
水道のホースというで服を作るという発想はなかったのだ。

どんな業界もその業界だけで成り立っているわけではなく
世間の一部であることに変わりはない。

世間の常識が変われば・・・
業界の常識もおのずと変わってくるものだ。

新しいことに挑戦しようと思ったら・・・
専門知識だけでは足りない。
むしろ、専門知識が邪魔をすることも少なくない。

柔軟性があるというのは・・・
世間の常識に敏感だ、ということなのかもしれない。


参考資料:トンテンカン