Episode No.1197(20020626):私は見た

その日・・・
事務所のある建物から、
ドラッグストアを挟んだ向こう側にある
会社で借りてる駐車場に車をすべり込ませると・・・

並んで停められた車の陰に
買い物袋を下げた60歳くらいの主婦が立っていた。

ドラッグストアの駐車場は別な場所にあるので
買い物客が車に戻って来た・・・というわけでもない。

主婦は、私に気づいて
そそくさと駐車場を出て行く。

その後ろ姿を見るともなしに目で追っていると・・・
主婦が、おもむろに自分の鞄から何やら取り出して
ドラッグストアの買い物袋に
それを詰め替えているところが見えた。

十中八九・・・万引きだ。

よくテレビでも、こんな様子のレポートを目にするし
向かいの大型スーパーマーケットの裏口から
パトカーが出てくるところを何度も目撃しているけど・・・
こう、モロにそれらしき人を見るのは初めてだった。

まだ、車の中にいた私は・・・どうしようかと身構えた。

追いかけて行って注意をすべきだろうか・・・?
いや、そんな考えは一瞬で消えてしまった。

自分の母親のような主婦に
・・・何て声をかければいいんだ?

まして、万引きの現場を見たわけではない。

じゃあ、もし店内で「その現場」を目撃したら
何か声をかけることができただろうか・・・?

病院で騒ぐ子供を注意する
大人を逃げ出すな」というCFがあったけど・・・

う〜む。

いずれにしても・・・
何だか淋しい後ろ姿だった・・・な。

生まれた時代のせいじゃ、ないだろ?


参考資料:どうせ自分なんて・・・と思った瞬間、自分じゃなくなる