Presented by digitake.com

 

Fictional Talk No.037(990516)
架空対談 
不景気とは

R「あ〜あ、何回ここに通えばいいんだか・・・。! ちょっとジイさん、そこどいてよ。掲示板が見えないじゃないか」

K「これは失敬。・・・この掲示板は?」

R「見ての通り、就職情報だよ。まさか、あんた学生にまじって就職する気?」

K「いやいや・・・。そう、就職の・・・。私の会社があるかと思ってな」

R「え! じゃジイさん、じゃない、アナタ様は社長さんですか?! これは誠に失礼いたしました」

K「私が会社を経営していたのは、もう昔の話でな。今は何の影響力もない」

R「なぁんだ、じゃどいてくれ。この不景気で就職先探すの大変なんだからサ」

K「不景気は、まじめにやる人はちっとも恐れる必要はない。むしろ不景気の来ることが、自分の見いだされる契機となる・・・と思うがね」

R「そんなこと言ったって、いい仕事につけなきゃ、困るじゃない。将来」

K「いい仕事って何だね?」

R「そりゃあ、給料が良くて・・・仕事もそんなにキツくなくて・・・」

K「修業時代の若い人たちは、職場の選び方にしてもむしろ困難な部署を選ぶくらいの心意気がほしいものだな」

R「そんなのキレイこどでしょ。無理だって。だいたい、楽にいいトコに就職するために、少しでもいい大学に入ったんだから・・・」

K「まず"できない"という考え方を捨てることだ。そして、一から新しい方法を生み出してみることだな」

R「この時期になって、そんなこと言ったって・・・」

K「習性は第二の天性である。青年のうちに勤勉努力、奮闘努力という良い習性のつく環境に身を置くことが大切だ。キミはまだまだ若いじゃないか」

R「そりゃあ・・・」

K「財産よりも強いものは何かというと、自分の身についたものだ」

R「学生時代は、遊びばっかり身につけちゃったからな・・・」

K「ごく当たり前のことを適時適切に行っていけば、商売なり、経営というものは、もともと成功するようにできている・・・んだよ」

R「確かにもうちょっと勉強しとけば、やりたいコトも見えてきた・・・かもね」

K「天は二物を与えないが、しかし一物は与えてくれている。その与えられた一つのものを大事に育て上げることだな」

R「一物さえ、あるんだかないんだか・・・わからないモンな・・・俺なんか」

K「この広い宇宙に自分という人間は唯一人しかいない・・・その持ち味も自分だけしか持っていない。大切にせんとな」

R「・・・よし、わかった。いっそ留年して勉強し直してみるよ。ありがとう、ジイさん。うんと勉強して、もう少し自分に自身が持てるようになったら、ジイさんのいた会社・・・受けてみようかな? 何て会社にいたの?」

K「私がつくった会社はな・・・松下電器産業という会社さ」


リクルート学生
松下幸之助(松下電器産業・創始者)1894-1989 享年95歳

ちなみに松下電器産業は5月11日、満60歳の社員を「再雇用」の形で雇用延長する制度を2001年4月から導入することで、労使間が大筋合意したと発表した。


参考資料:「劇画/松下幸之助」川崎のぼる=画 白取春彦=作 サンマーク出版=刊

[ Backnumber Index ]