THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行10 13/13


■禁断の扉

2人は本屋を出た。

「いや、ここで会えてよかった。アパートのまわりをウロウロなんかしてたらストーカーと間違えられてしまうところだったよ」

「いゃだ、ふふふっ」

三村は夕べの泣き顔が嘘のように微笑んでいる。

「とにかく誤解なんだ、アレは。話せば長くなるけど・・・。誤解なんだが・・・キミとの約束を破ってしまったことにかわりはない。この通り謝る」

宮田は三村に向かって頭を下げた。

「よしてください課長。私の方こそ何だか感情的になっちゃって・・・。もう少し冷静にお話をうかがえばよかったと思ってるんです。ごめんなさい」

「キミが謝ることはないよ、本当に悪いのはボクの方なんだから・・・。このまま月曜日に顔を会わすというのも気が引けてねぇ。・・・でも、もう安心した。じゃあボクはこれで・・・」

と言いかけたところで、宮田は大きなクシャミをした。

「大丈夫ですか?」

鼻をすすりながら宮田が答える。

「うん、ちょっと薄着をして来てしまったもんだから・・・でも心配ない」

「心配ないって・・・まだ、やっと風邪が治ったところじゃないですか?! また、ぶり返したら大変!」

そう言われてみると確かに宮田もちょっとだけ心配になってきた。

「課長・・・よかったら、うちへお寄りになりません? このあたりに喫茶店もありませんし、実はこれからお鍋でもしようって買い物してきたところなんです」

そう言って三村は、いっぱいに詰まったスーパーの袋をかかげて見せた。

「しかし、ひとり暮らしの独身女性のウチに上がり込むなんて・・・」

「ひとりでお鍋してもつまらないし・・・。夕べお話ししたかったことも・・・」

三村の笑顔がフッと消えた。
それに気づいた宮田は言った。

「じゃあ、ごちそうになろう」

住宅街の暗がりをぬけてたどり着いた三村のアパート。

「私・・・この部屋に男性を入れるの・・・初めてなんです」

「えっ?!」

ドキリとした宮田の目の前にスーパーの袋が運ばれた。

「ゴメンなさい、ちょっと持ってて・・・」

上着のポケットからカギを取り出した三村が・・・今、禁断の扉を開けた。

・・・以下、次週

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