THE THEATER OF DIGITAKE 初めての不倫旅行10 10/13 |
■雑踏の宮田 「まぁ、そんなワケで・・・」 木下は3杯目のコーヒーを注文した。 「いい話じゃないか」 宮田は、まだ冷めた1杯目のコーヒーをすすっている。 「そこで終われば・・・な」 「・・・そうだな」 「で、まぁ優しさがちょっと度を超えてしまったわけよ」 「ふーん」 もし自分が木下と同じ境遇でセイコに出逢っていたら、自分もセイコを雇ったかもしれない。 しかしそこで、一線を超えるということは・・・自分の性格ではできない話だ。 それは、いいことには違いないが、歯がゆく思うことも・・・正直言ってないとは言えない。 いったい木下がいかにして、その一線を越えたのか・・・? 参考までに突っ込んで聞いてみたがったが、今はそんな話をしている場合ではない。 その件については、また折を見て・・・。 宮田の携帯電話の手続きは、木下の店でセイコが行ったものだ。 ひょっとしたら宮田のところへセイコから連絡があるかもしれない。 もしも連絡があったら知らせてほしい・・・という木下の頼みを聞いて、宮田は木下と別れた。 横浜駅に着いた宮田は切符の自動販売機の前で取り出したサイフを取り出そうと上着のポケットへ手を入れた。サイフより先に指先に当たったのは携帯電話だった。 休日でごった返す中、宮田はしばし手にした携帯電話を見つめて考え込んだ。 あんなことがあったというのに、その後、三村からは何の連絡もない。 いや、むしろあんなことがあったから連絡がないと考える方が妥当か・・・。 このまま月曜日を迎えてしまっては、いったいどんな顔をして三村に接すればいいのかわからない。 この誤解は、あくまでもこの休日の間に説いておくべきだ。 あいにく三村の自宅の電話番号を書いたメモ帳は自宅に置いてきてしまった。 だが、あのドライブの時に自宅近くまで行ったことはあるので、おおよその場所はわかる。 決心したように電車の料金表を見上げた宮田は思った。 問題は・・・洗濯物だ。 |