THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行10 6/13


■主夫・宮田浩一郎

おかゆ作りに悪戦苦闘した宮田が妻をダイニンクデーブルに迎えたのは、それから40分後のことだった。

「良樹は、まだ寝てるのかしら?」

「夕べは、ずん分遅くまで勉強してたようだからな」

「昼間寝てるくらいだったら、何も夜中にやらなくたって・・・生活が不規則になるだけよ」

「そりゃあ、お前。夜中の方が集中できるだろ? 静かだし・・・。お前にも経験ないか?」

「まぁ、そうかもしれませんけど。・・・今日はヤケに良樹のカタを持つんですね」

「そんなことないよ」

再び妻を寝かせた宮田は洗濯物を干す。

ハンガーがいくつも並んだような形をした洗濯物の干し器がある。
洗濯機から取り出した順に、何の気なしにハンガーの端のから洗濯物を最後までかけていくと左右の重さのバランスが釣り合わずに傾いて、何ともあんばいが悪い。
一度かけた洗濯物をはずして、重さをはかりつつ両端からかけていくと、今度はみごとに釣り合った。
これもコツだな・・・と宮田は思った。

洗濯物を干し終わると早速昼メシの支度にかかることにした。
メニューはうどんと決めたが、問題は具だ。栄養のある物を選びたい。
慣れないことだから充分に準備時間をかけなければならないし、一番の問題は台所のどこに何があるのかが、もよくわからない・・・という点だ。

ゆでる鍋の選択に10分。うどんが入っている場所を探すのには15分の時間を要した。
そんな感じで宮田が台所でバタバタやっていると、2階から良樹が降りてきた。

「おお! 良樹。おはよう」

「何か食べるもんある?」

「今な、うどんを作ろうと思って、かかってるところだ」

「すぐ出来そう?」

「ああ。・・・あと30分、いや40分くらいあれば・・・」

「40分? ・・・俺、コーンフレークでいいや」

良樹はそう言うと、さっさと小鉢にコーンフレークを入れて牛乳をかけて食べ始めた。


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