THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行10 2/13


■チョットだけよ

会場がざわめきたった。
最前列に陣取る客は一斉に座り直して、ステージのそでに注目する。

ステージそでのカーテンが大きく揺れる。
やがて白くて細い足がのぞいた。

宮田は息をのんだ。
こういう場所では、わりと年のいったオバさんが出てくる場合もあると聞かされていたが、あの肌のつやを見る限り若い! ・・・今日はアタリだ。

一度足をひっこめた踊り子は、金色のを長い髪を揺らしながら、後ろ向きにステージの中央に出てきた。
着ていることがまったく意味かないようなスケスケのネグリジェ姿。
宮田の姿勢が前面に20度ほど傾く、視界には踊り子の大きな丸い尻しか入っていない。

「こっち向いてぇ〜」

ガンガンに響くディスコ調の曲に合いの手を入れるように誰かが叫んだ。
踊り子が振り返る。

三村クン?!・・・宮田は目を見開いたまま硬直した。
金髪の踊り子、しかしその顔カタチは間違いなく三村しよりだった。

宮田の心理状態は19歳の頃からイッキに40代も後半に入った今に引き戻された。

踊り子となった三村は大げさなモンローウォークで男たちの視線を釘付けにしながら中央の丸いステージに進んでくる。
宮田は着ていた上着をとっさに脱いで、ステージ上の三村に向かって放り投げた。

「早く、それを着なさい! 三村クン!!」

足下にころがる宮田の上着を見つめて踊りを中断した三村は、宮田の方をジッと見た。

「早く! 三村クン、早く着なさい!!」

必死で呼びかける宮田に向かって、三村はニッと笑うと、突然足下の上着をステージから蹴り落として言った。
会場の男たちは大喜びだ。

「課長・・・どう? 私の魅力」

あっけにとられた宮田を後目に三村はネグリジェのボタンを開け放った。


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