THE THEATER OF DIGITAKE 初めての不倫旅行9 6/10 |
■意外な電話 次の日は、週末の金曜日だった。 宮田は、まだ少し微熱があったが、今日一日頑張ればまたすぐ休みだと思って会社へ出た。 幸い熱は午前中には下がったようだ。 もしかすると事務所にいるという緊張感が熱を下げたのかもしれないが、とりあえず何とか今日一日は乗り切れそうだ。 昼休みに昼食に出ようとしたところで、タイミング良く宮田の携帯電話がブルブルと震えだした。 もはや妻にも公認となった携帯電話だ。 三村からか? と瞬時に思ったものの、目の前には昼食に出ようとしている三村の姿が見える。 とくかく宮田は電話に出た。 「宮田だ」 「よう! 宮」 声の主は旧友の木下だった。木下のところで契約した電話だから、ヤツがこの番号を知っていても不思議はない。 「おお木下。この間は本当に世話になったな。助かったよ」 「まぁ気にすんなよ。・・・ところで宮、ちょっと頼まれてくれねぇか?」 「もちろん、俺にできることだったら・・・どうした、いったい?」 その後の木下の話を聞いて、宮田はまた熱が出そうな気がしてきた。 ついに木下は愛人とのことを女房に感づかれたらしい。 いつもホテルにいたところを同じホテルで知り合いの結婚式に出ていた女房に見られたというのだから、何ともマヌケな話・・・。しかも決定的である。 そこで木下は、例の愛人が実は宮田の愛人で、自分はそのことについて相談に乗っていただけと言い逃れをした。 しかし、女房はそんな話を真に受けるはずはない。 ここは、当の宮田から直接、木下の女房に説明をしてほしい・・・という無理な話だ。 「だから頼むよ、今夜。な?」 「・・・あ、ああ」 「じゃ場所は、この間の・・・セントラルホテルのロビーで。6時半なら間に合うよな。よろしく頼む」 この間の水晶玉の一件がなければ絶対に断るところだが、今の宮田にはどうしても断ることはできなかった。 |