THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行9 2/10


■宮田発熱

夢から覚めた宮田は、まだ続く悪寒に首をかしげた。
と、かしげたとたんに頭にズキンと痛みが走る。間違いない・・・風邪だ。

あたりはまだうす暗かったが、宮田が起きあがっていることを知った妻が声をかけた。

「どうしたの?」

「どうも・・・風邪をひいたらしい」

「あら、ひどい風邪声。夕べ夜道を歩いたのがいけなかったのかしら・・・」

妻は近づいて宮田の額に手を当てた。
とっさに、こういう行動に出られるようになったのは、子供を持ってからのことだ。

「熱があるわね。とりあえず水枕して・・・」

妻は上着をはおって、台所に向かった。

「すまん」

熱がある・・・と知ったとたん、宮田は頭がグルグルとまわっているような気がしてきた。

朝になった。
体のダルさはぬけていない。正式に熱をはかってみると体温計は38度を指した。

「休んだ方がいいわね」

ベッドに寄り添う妻が言った。

「仕方ない。9時になったら会社に電話しよう」

不覚だ・・・と宮田は思った。しかし、幸い今日は来客の予定もないし、比較的仕事はヒマだったのが不幸中の幸いだ。

セーターを着込んだ宮田は、洗面所でうがいを5回・・・いや風邪をひいたので10回してダイニングテーブルにつく。
息子の良樹がパンをかじっている横で、宮田の目の前にはおかゆが出された。
ありがたい配慮であったが、おかゆを食べていると、ますます自分は病気になったという気持ちが大きくなってきた。

息子が学校に出て、妻はゴミを出しに行った。
普段は5分以内で戻ってくるのに、10分たっても帰って来ない。
さては隣の主婦につかまったな・・・と思いながら、再び時計を確認すると9時10分前だった。

この時間なら、会社には誰か・・・いや、三村はもう来ているとこだろう。
宮田は受話器を手にした。


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