THE THEATER OF DIGITAKE |
宮田浩一郎■長塚 京三
宮田裕美子■田中 裕子 三村しより■石田ゆり子 |
木下の妻■飯島 愛 木下の愛人 |
■大奥マルヒ物語 この季節になると、いかにリッパな城に住んでいようと江戸時代は寒い。 現代のような空調設備もない当時の人たちは、きっと暑さや寒さに対する抵抗力もあったに違いないが、設定こそは時代劇ではあっても、そこにいる自分は現代人のままの感覚だから、やっぱり寒い。 チョンマゲ姿の宮田浩一郎は、行燈の明かりに照らし出された紫をふくさを見つめながら寒さをこらえていた。 ふくさのかかった進物を差し出したのは、これまたチョンマゲ姿の旧友、木下。 ふくさを取ると中には和紙に包まれた小判の山がある。 ひとつの包みが百両だとすると、千両はある。 はたして、この千両が現代の貨幣価値にして、どれくらいの金額になるのかはピンと来なかったが、とにかく大金には違いない。 宮田は、一度でいいから言ってみたかったあのセリフを口にした。 「木下の・・・そちもワルよのう」 木下を下がると、いつまでもこんな板張りの寒い部屋にはいられない。 廊下に出ると、むこうに障子が明るく光った部屋がある。 着慣れぬ羽織、袴で急ごうにもなかなか先に進めない。 そういえば、こんな格好をするのは結婚式以来のことだ。 ようやく、たどり着いた部屋の前。勢いよく障子を開けると、そこには着飾ったきれいどころがワンサといる。 吸い込まれるように部屋に入った宮田の元に女たちがまとわりつく。 見ると女たちの中には、部下の三村しよりもいる。そして、どういうわけか木下の愛人のあの若い女も。 まぁ、そんなことはどうでもいい。少なくともここは暖かい・・・ような気がする。 しばらく女たちのもてなしを受けていると、奥からもうひとり女が現れた。案の定、宮田の妻だった。 宮田のまわりにいた女たちが一斉に下がる。 宮田は、再び身も凍るような寒さに襲われた。 |
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