THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行8 7/11


■燃えろ! ダンドリー魂

「あ、あなた? よかった、つかまって。・・・やっぱり携帯電話って便利ね」

それは聞き覚えのあり過ぎる声だった。間違いなく・・・妻だ。
胸をはって電話を受けていた宮田は急に身をかがめた。

「お、おまえ? どうして、この番号知ってるんだ?」

「だって、この間、料金明細書が来てたでしょ? あれに書いてあったのよ。・・・かけちゃ、いけなかった?」

「いや、そんなことは・・・ないが。どうしたんだ、いったい?」

「実は・・・」

妻は水晶玉の一件を洗いざらい素直に話した。最後は少し涙声だった。
彼女の結論は、こうだ。

「あなたのお友達の木下さん・・・こういう装飾品の値段とか詳しいでしょ?! 相談できないかしら?」

宮田にとっても、それは携帯電話の誤解を解く絶好の機会だった。
それに、宮田自身、10万円以上の買い物と言えば、車と家を買ったこと以外思い当たらない。
確かにヤツなら、この手の相談をするにはうってつけだ。

「よし、早速これからヤツの店で落ち合おう。その水晶玉持ってこい。ローンの契約書も忘れずにな。木下には連絡しておくから。・・・ヤツの店の場所は・・・テレビのわきに店の地図が入った招待ハガキがあったろ・・・そう、それだ。そっちの方が近いから早く着くかもしれないが、良樹の晩飯だけは用意して出るように・・・いいか?!」

宮田は妻との電話を切るやいなや木下の店に連絡をとる。ひさびさにダンドリー魂が燃えてきた。
幸い今日は木下がいた。

「おう宮、こないだはすまなかったな、留守してて・・・」

「それが、ちょっと相談にのってもらいたいんだが・・・」

木下も2つ返事でこれから宮田夫妻に会うことを約束してくれた。

こうして水晶玉の問題は、宮田の妻だけでなく宮田家の問題になっていった。


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