THE THEATER OF DIGITAKE 初めての不倫旅行8 4/11 |
■もうひとつの水晶玉 「間違いないわ・・・この台座」 宮田の妻は、思わず振り返って聞いた。 「その台座が何か?」 「いえね、私。この水晶玉とまったく同じものを見たことがあるのよ。水晶の大きさも・・・台座に入った模様までいっしょだもの、間違いないわ」 さては、隣の主婦もあの占い師のところに行った?・・・とっさにそう思ったが、考えてみればあの占いコーナーができたのはデパートと同じだから、昨日行かない限り、あの占いコーナーをのぞくことはないはずだ。 「どこで見たと思う?」 隣の主婦は、何だか得意気だ。 「さぁ・・・」 宮田の妻は心底首をかしげた。 「戸田さんちよ」 「戸田さん?!」 それを聞いた宮田の妻は何だか嫌な予感がしてきた。 戸田家は同じ町内にある家で、老夫婦と年齢不詳の娘の3人暮らしだ。 老夫婦は滅多に出歩かず、娘とは宮田の妻も道で顔を合わせれば挨拶くらいはするが、向こうは会釈するだけで考えてみると、その声すら聞いたことがない。 数ヶ月前までは確かにその娘の夫がマスオさん状態で同居していたが、噂によれば現在は別居していて、元の3人暮らしに戻ったままのようだ。 「この夏だったかしら、ほら、ウチの次に回覧板まわすの田中さんちじゃない?! 田中さんちが夏休みの旅行かなんかでいなかった時に、その次の戸田さんちに回覧板持ってったのよ、私。・・・めったにない機会だから偵察しようと思って、おはぎ持ってね」 偵察・・・? じゃあウチも偵察されているのか? と、宮田の妻は思ったが話の続きには興味があった。 「そこで見たのよ、これと同じ水晶玉。・・・戸田さんの娘さんが大事にしてたわ」 年齢不詳の上目遣いの娘と水晶玉・・・似合う! と、宮田の妻は思った。 |