THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行7 12/14


■運命の帰宅

宮田は、とうとう自宅の前までたどり着いてしまった。
結局、木下との連絡はつかないままだ・・・。

立ち止まって腕組みをしようとすると、右手に持っていた鞄が落ちた。
鞄を拾い上げた宮田は考える余裕もなく、玄関のトビラを開けた。

「ただ・・・いま」

いつもは出迎えてくる妻は出てこない。
やはり、まだ怒っているのか?

すると、バタバタと階段を下りる音がして息子の良樹が飛び出てきた。

「おう、良樹。ただいま」

顔をしかめた良樹は小声で言った。

「何か、かあさん・・・おかしい」

「おかしいって? 病気か?」

「そうじゃないけど・・・」

廊下を進んでダイニングを除くと、妻はテーブルに掛けて一点を見つめていた。
その視線の先には水晶玉があった。

「・・・おい、今帰った」

宮田が恐る恐る声をかけると意外にも普通の返事が返ってきた。

「あら、お帰りなさい。今、食事の用意しますから・・・お風呂は沸いてます」

「じゃあ、先に風呂にする」

とりあえずホッとした宮田は、洗面所で5回うがいをすると、ようやく汚れたYシャツに別れを告げて、風呂に入った。
それにしても気になるのは妻の態度と・・・水晶玉だ。


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