THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行7 11/14


■体育会系魂

しばらくして、宮田も帰り支度を終えて席を立った。

途中で、もう一度だけ木下に電話を入れてみよう。
しかし、さっきは誰も出なかったから・・・つかまらないかも・・・。

洗面所に寄って鏡を見ると、Yシャツの襟元が汚れているのが目についた。
今日こそは着替えたい。

廊下に出て事務所とは反対方向へ歩き出した時、後ろから大声がした。

「宮田課長!!」

振り返ると駆け寄ってきた男がその場に土下座した。
一瞬誰だかわからなかった。

「申し訳ありませんでした」

と言った男は静かに顔を上げた。それは、頭を丸坊主に刈り上げた部下の柳だった。

「柳クン?! どうした? その頭」

「いえ! せめてものお詫びのしるしにと思いまして・・・」

再び深々と頭を下げる柳。
宮田は柳の腕をつかんで抱き起こしながら

「まぁ、いいから立ちたまえ」

と言ったが、その先、何と言っていいかわからない。
ハッキリわかったのは、この柳という男が根っからの体育系だということだけだ。

立ち上がった柳は言葉を選ぶように話した。

「正直言って、自分でも夕べ何をしたのか、よくわからないんですが・・・」

「そうだろうねぇ」

宮田は、ちょっと眉をしかめた。

「岡崎からだいたいの話は聞きまして・・・。とにかく課長にご迷惑をおかけしたことだけは事実のようで・・・すいませんでした」

ここまでされると宮田としても、これ以上責めるわけにいはかない。

「まぁ、誰にでも誤解はあるから・・・」

頭をもたれている柳は上目づかいで宮田を見た。

「誤解・・・ですよね?」

「誤解だとも。もちろん、誤解だ。誤解で悪いか?!」

宮田は廊下に柳を残したまま、エレベータに向かって歩き去った。


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