THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行7 10/14


■三村の挨拶

宮田は、とりあえず木下から自分が家に帰りつく前に自宅へ電話してほしいと思っていた。
携帯電話のモニターを押しつけてしまったばっかりに・・・とか何とか言ってもらえば、妻の誤解も少しは薄れるだろう。

例の店番の愛人は、ちゃんと伝えてくれているのだろうか?
不安に思った宮田は夕方、再び木下の店に電話を入れてみたが、誰も出ない。
こんなことなら、それこそ木下の携帯電話の番号を聞いておくべきだった。

終業時刻になって、真っ先に事務所を飛び出て行ったのは、いつものOL3人組。

見ると三村も帰り支度をはじめている。
やがてショルダーバッグをかけた三村が宮田の席の前まで来た。

「課長」

宮田は一瞬、ドキッとした。
また今夜も2人で会いたいと言われたらどうしよう?!
それは、このうえなく嬉しいことだが、夕べあんなことがあったばかりなのに今夜も遅くなってしまっては、事態の収集はつかなくなってしまう。

「な、なんだね? 三村クン」

「お先に失礼します」

「あ、ああ。おつかれさま」

宮田は前のめりになっていた体を背もたれに伸ばした。
すると、今度は三村が前のめりになって小声でささやいた。

「3日連続じゃあ、奥さまに悪いから・・・」

宮田は今度はピクリとして再び背もたれから体を放した。
すでに三村は背中を見せている。

まわりの課の連中も、もうほとんどいない。
こんなセリフ聞かれたら誰だって勘違いするだろう・・・。
しかし、それが勘違いであることに少しだけイラ立ちを覚えたのも正直なところだった。


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