THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行7 8/14


■光と陰

カーテンを閉められて、狭い空間は一気に薄暗くなった。
淡い光を放つのは、小さな丸いテーブルの上に置かれた直径20cmほどの水晶玉だけだ。

こうなると、もう逃げられない・・・。どうせ料金を払わされるなら、ジックリと観察してやろう。
そう思った宮田の妻は、どうして水晶玉が光るのか? 台の下に電球でも仕込んであるのかと、水晶玉に顔を近づけた。
すると、同じように水晶玉に顔を近づけてきた占い師とオデコが当たりそうになって、あわてて引っ込めた。

「やっぱり光がほしいのね・・・。じゃ、まずアナタの誕生日を教えてちょうだい」

宮田の妻は自分の誕生日を告げた。

「ご結婚は・・・されてるわね。ご主人の誕生日も教えていただけるかしら」

誕生日を告げると、占い師はテーブルの上に広げ始めたタロットカードの手を止めて、黒い鳥の羽で、その上を数回祓った。

「お悩みは・・・ご主人のことね」

宮田の妻はドキッとした。・・・でも考えていれば、自分くらいの年の主婦が悩むことと言えば、ダンナか子供のことに決まってる。

「陰が見えるわ・・・」

水晶玉に目をやった占い師が言った。宮田の妻ものぞき込んで見たが、ぼんやりと光っているので、陰があるようにもないようにも見えた。

「あなたの知らない陰ね」

このひと言を聞いて、宮田の妻はやや冷静さを失った。
自分の知らない陰・・・。やっぱり、あの人に女が?!

「陰を消すためには、強い光が必要よ・・・でも、アナタの運勢は今ちょうど光を失っている時ね。気をつけないと失うものは大きいわ」

「気をつけるって・・・いったいどうすればいいんです?」

宮田の妻は思わず身を乗り出してしまった。


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