THE THEATER OF DIGITAKE 初めての不倫旅行7 6/14 |
■デパートは人の渦 いったいどこから、これほど多くの人が沸いて出てきたのだろう? 駅からバスターミナルをまたいで完成したばかりのデパートへ続く歩道橋は、こぼれんばかりの人でごった返していた。 これじゃあ、プレオープンも何もあったもんじゃない・・・。 隣の主婦に連れられてここまで来た宮田の妻は、その人の波にうんざりしたが、ここまで来て一人だけ帰りますとも言えない。 隣の主婦は、あくまでも強気だ。 「どーゆーことかしら、ねぇ? きっと招待状もらった人たちが入っていくもんだから、招待状のない人まで勘違いして入ろうとしているのに違いないわ。この人たちがみんなゴールドカード持ってるようにも見えないし・・・。宮田さん、とにかく入口まで行ってみましょ」 「・・・は、はぁ」 横幅のある隣の主婦が人垣をかきわけてズンズン進んで行ってくれたおかげで、宮田の妻は案外すんなりとデパートの入口までたどりつくことができた。 隣の主婦は入口に立つ係員に招待状を突きつけるように差し出すと、デパートに入って行く。 しかし、建物の中まで人の波は続いていた。 「まったく、もう。何よこれ! きっとゴールドカードを持っている人以外にも招待状を乱発したに違いないわ! 失礼しちゃう。・・・仕方ないわ、宮田さん、もしはぐれちゃったら別々に帰ることにしましょ」 「わかりましたぁ」 その声が隣の主婦に届いたかどうか・・・。だが、こうなったら宮田の妻としては一刻も早くはぐれたい気持ちもあった。 2人がはぐれるのに、そう時間はかからなかった。 きっと特売品があるに違いないと人が多い方多い方へと進む隣の主婦をよそに、宮田の妻は、できるだけ人の少ない方少ない方へと向かっていた・・・当然の結果だ。 新しいデパートは、どこに何があるのか、さっぱりと勝手がつかめない。 特別にほしい物があるわけでもないので、近くにエスカレータがあれば何となく登ってみたり、ちょっと目をひく洋服でもあればフロアをまわってみたりするうちに、いったい自分が何階にいるのかさえわからなくなってしまった。 偶然に出たレストラン街を歩きながら、そういえばまだ昼食をとっていなかったことを思い出したが、どの店も並んでいるし、高そうで素通りした。 ひとりでレストランなんて・・・もったいない、もったいない。 |