THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行7 5/14


■夫として、上司として

一方その頃、宮田は仕事に精を出すことで、行き場のないモヤモヤした感情から逃れようと必死だった。

夕べ酔った勢いで自宅に押しかけてきた部下の柳に顔を合わせたら何と言おうか・・・。
ずい分と悩んでいたが、結局、柳は直行の仕事があって今朝は会社に出てきていない。
本当は単なる二日酔いかもしれないけれど・・・。

夕べ、柳といっしょだった岡崎は朝一番に宮田の元へ謝りに来た。
その後の様子を聞いたところでは、おそらく柳自身に夕べの記憶はないだろう。

三村からの相談も決着をみたわけではないが・・・いくら話したところで、どうせ結論など出ないことはわかっている。
とにかく、三村と過ごすことだけが宮田の楽しみではあったが・・・こうなると、あまり悠長なことも言っていられない。
まずは妻の誤解を解き、平穏な家庭生活を取り戻さなくては・・・!
さもないと今夜もまたパンツひとつ取り替えられないことになってしまう。

昼休み。宮田は解決策のひとつとして、携帯電話をくれた旧友の木下に電話をかけてみた。
この携帯電話は木下から貰った物で、決してやましい動機から購入した物ではないことを木下から妻に説明してもらうために・・・。

木下の店に電話がつながる。出たのは、店番をしている女性・・・木下の愛人だ。

「社長ですか? 今、留守なんですけどぉ。どうしますぅ?」

「では、宮田から電話があったことをお伝えください」

「わかりました、言っときます。じゃあ」ガチャリ!

じゃあじゃないだろう? じゃあじゃ・・・。私が友人だったからいいようなものの、お得意だったら、どーすんだ?! 木下のヤツ、いったいどんな社員教育をしているんだ、と宮田は受話器をにらみつけた。

おそらくろくな教育はしていないんだろうな・・・少なくとも社内では。
それに引き替え私は上司として、ちゃんと部下の教育はしている・・・少なくとも社内では・・・。
今の宮田にとっては、それは決して胸のはれる自負とは言えなかった。


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