THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行7 2/14


■重い朝

ドスン!

宮田はソファーからころげ落ちて目を覚ました。
夕べは、とうとう寝室に入る勇気もないまま、ソファーで寝てしまった。

いかん! しかも帰ってきてから、うがいもしていない。
洗面所で顔を洗った宮田は、夕べの分と今朝の分、合わせて10回うがいをした。

ダイニングをのぞき込むと、息子の良樹がひとりで朝食をとっていた。
夕べの騒ぎは良樹にも聞こえたはずだ・・・。

バツの悪い父親は、まだ寝ぼけたふりをしながらダイニングに入って行った。

「お! おはよう、良樹・・・早いな」

「とうさん・・・いいのかい? もう7時半だぜ」

壁掛け時計を見ると、確かに7時半をちょっとまわっている。いつもなら、もう出る時間だ。

「こりゃまいった! 急がないと」

宮田は確かにあわてた様子を見せて、トーストをほおばったが、それは余計な質問を受けないためのポーズでもあった。

息子は何も言わずに、もくもくと食事を続けている。
パン1枚を40秒ほどでたいらげた宮田は、着たままのYシャツを襟を正しながら言った。

「・・・かあさんは、どうした?」

「寝てるよ。一度、朝飯作りに起きたけど、調子が悪いって・・・また寝た」

「そうか・・・」

ソファーにかかった上着をとった宮田は玄関に足を向けた。

「おまえは、まだ出んのか?」

「8時には出るよ」

「じゃあ、とうさん・・・行くから。かあさんが寝ているようだから、出がけに戸締まり頼むな」

こうして宮田は昨日とまったく同じ服装のまま家を出た。
宮田にとって最新の妻の記憶は、声をはりあげて泣く表情のままだ。


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