THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行6 12/12


■状況証拠

2人を見送った宮田が玄関に戻ると、妻はまださっきと同じところに立っていた。

「騒がせてすまなかったな・・・悪い男ではないんだが、酒が過ぎたらしい」

宮田は、そう言って上がろうとしたが、妻はその場でうつむいたままだ。

階段の陰から、息子がのぞき込んでいる。

「良樹、勉強中にすまなかったな。・・・いや、とうさんの会社の若い連中なんだ。心配いらないから」

息子は何も言わずに階段を上って行った。

無表情のまま立ちつくす妻に宮田は笑顔をとりつくろいながら言った。

「おい、おい。どうしたんだ? まさか、ヤツが言ってたことを真にうけてるんじゃないだろうね?! うちくらいの大きな会社になると、よくある誤解なんだ。つまらん噂をする連中もいるからなぁ・・・困ったもんだ」

その言葉を聞いた妻は、右手に握りしめていた空のコップをガンと下駄箱の上に置くと、そこに置いてあった封筒を取って夫につきつけた。

「何だ、この封筒? これがどうかしたか?」

封は切られている。
宮田が中味を見ると・・・それは宮田名義の携帯電話の料金明細書だった。

必死に涙をこらえた妻は、押しつぶしたような声で静かに言った。

「どうして私に黙ってたんです? 電話のことぉ・・・?」

宮田は息をのんだ。返す言葉が見つからない。

「・・・火のないところに、煙は立たないでしょうがぁ」

妻はそう言いながら、こらえきれずにポロポロと涙をこぼしばめた。
やがて声を上げて泣き出すと、奥の寝室に駆け込んで行ってしまった。

残された宮田の手から明細書がハラリと落ちた。

・・・be continue.

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