THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行6 9/12


■女は魔物?

海の見えるバーを出た宮田と三村は、帰りのタクシーをつかまえるいつもの通りに出た。

「今夜も結論は出せなかったね」

「いいんです。でも何だか課長とお話ししていると、とっても気分が楽になった感じがするんです」

しばらく歩いて、宮田は意を決したように三村に尋ねた。

「・・・ひとつだけ気になっていたことがあるんだが」

「何です?」

「見合いの話に乗り気でない本当の理由」

「本当のって? やっぱりお見合いっていう形式が・・・」

「それだけ・・・かね?」

「え?」

「・・・誰か好きな男の人がいるんじゃないのかね?」

立ち止まった三村は、うつむいたまま上目づかいに宮田を見た。

「・・・います。いますよ。本当は好きな人・・・」

宮田の心は高鳴った。ひょっとすると今夜は、もう一歩進むかもしれない。
"いけない"という気持ちより、"やぶさかでない"気持ちの方が、どう考えても優先していた。

「誰だと思います?」

逆に三村が尋ねた。想定していない質問に宮田はとまどった。

「あ! タクシー」

三村が手を上げると2人のわきにタクシーが横付けされた。

「課長、お先にどうぞ」

「いや、キミが先に行きたまえ。ボクの方が近いし・・・」

「そうですか。いつもすいません。それじゃお先に」

そうして三村は今夜も去って行った。

宮田にとって自分の部下であり、ひとまわり以上も年の離れた三村が、何だか妙に年上の女ように感じる夜だった。


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