THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行6 6/12


■怪しい2人

女性から個人的な悩みをうち明けられるというのは、男性にとって悪い気はしない。
それが、自分好みの女性であればなおさらのことである。・・・宮田も例外ではなかった。

だが、女性の悩み相談は、実のところ相談になっていない場合も多い。
決して結論が出ないような内容だったり、すでに心のうちでは結論が出ているのに、それを応援してほしいだけのことだったり・・・。
つまりは聞いてほしい、聞いてくれさえすればスッキリしてしまうことが少なくない。

それが"ダンドリー"の異名を持つ宮田にはたまりかねることでもあった。
問題解決のために段取りを立てて突き進んでいくのが彼のやり方だ。
解決することを目的としない悩み事など聞いているヒマはない。

本来であれば、三村の相談もその部類に入る。
見合いをしたことで両親の顔は立った。見合いの相手が嫌なら断ればいい・・・それだけのことだ。
何も悩むことなど少しもない。

しかし、鬱ろいだ表情の三村と2人きりの空間は、"ダンドリー魂"を忘れてしまうほど、非日常的な怪しい魅力に満ちていた。

「今夜はもう遅い。ボクもよく考えてみるから、明日の晩、また話し合おうじゃないか」

月曜の夜は、こうして別れた。
また、今週も月曜から自宅で夕食をとることはなかった。
何も言わなければ妻は、まだ仕事が忙しいと解釈してくれるだろう・・・宮田にはそういう計算もあった。
そして、火曜日も自宅で夕食をとる予定はない。

雑踏は自分を街の風景の一部にしてくれる・・・そう思いがちだが、それは同時に何百、何千という数え切れない人々の目に自分をさらけ出していることでもある。

実は月曜日の会社帰り、宮田の課のOL3人組のうちのひとりが、宮田と三村らしい2人連れが、そそくさとタクシーに乗り込むことろを目撃していた。

火曜日。OL3人組みは朝から、その噂で盛り上がっていた。

「・・・あり得るよ、それ!」

「だって、いっつも三村ばっかしヒイキにするじゃん、課長」

通りがかりにその言葉を聞くともなしに耳にした柳は、立ち止まって言った。

「それは、オマエたちが仕事しないからだよ!」

3人組は、いつものようにプイと顔をそむけると机に向かった。
柳が三村の席に目をうつすと、三村はちょうど席をはずしている。
柳は、しばらくの間、その整頓された三村の机をジッとながめていた。


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