THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行5 12/12


■酔い覚まし

「おまえが飲むなんて珍しいね」

寝室でパジャマに着替えながら、宮田は言った。

「あなたこそ月曜日から飲んでくるなんて・・・」

お互いイイ気分ではある。
やがて妻は世理子を通して聞いた良樹の彼女のことを話しはじめた。

「だから言ったじゃないか。心配いらないって」

宮田もあいかわらず上機嫌だ。

「私・・・なんだか嬉しくなっちゃって」

そう言う妻の言葉に思わず

「うん、俺もすごーく嬉しかった」

と宮田が口にすると、すかさず妻は聞いた。

「何が?」

ついさっき玄関先で経験した沈黙と同じ種類の沈黙が再び走った。
沈黙を破る時の宮田は、いつも視線が泳いでいる。

「そりゃあ、良樹のことに決まってるじゃないか」

「でも、あなた・・・最初から心配ないって言ってたでしょ?」

「そりゃ多少は心配してたサ・・・おまえほどじゃなかったけれど」

「本当に心配いらないのね?」

宮田は硬直しながら答えた。

「な、何が?」

「・・・良樹のことよ」

妻はそう言って布団にもぐり込んでしまった。

宮田は小さく「もちろん」とつぶやいたが、これ以上話を突っ込んでいくのは危ないと感じていた。

・・・be continue.

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