THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行5 4/12


■オバとして

パリの土産話もそこそこに、世理子は姉の悩みを聞くことになった。
フリーカメラマンとしての仕事の中には、時として取材相手へのインタビューもある。世理子にとっては得意な分野だ。

世理子は今、都内の賃貸マシンションでひとり暮らしをしているが、甥っ子の良樹が生まれた頃はまだ実家にいた。
宮田夫妻が現在の建売住宅を購入するまでは、妻の実家の近くにアパートを借りていたこともあり、世理子は幼い頃からの良樹をよく知っていて、自分の弟のように可愛がっていた。

「へぇ〜、あの良樹がねぇ。年上の彼女?! へぇ〜」

世理子はニヤニヤしながら姉の話を聞いた。

「笑いごとじゃないのよ。・・・受験生なのに」

「受験生だって・・・、いゃあ受験生だからこそ、恋もしたいんじゃない? しかし、あの良樹がねぇ〜」

「・・・・」

世理子に去来するのは、カブトムシがつかめずに泣いていた幼い頃の良樹の姿だ。

「で? 何悩んでるの? おねぇちゃんは」

「何って? そりゃあ悩むわよ、母親として」

「悩むことないじゃん。聞いてみれば? 良樹に直接。・・・彼女と、どこまで進んでるのかって?」

「そんなこと、母親から聞けるわけないでしょ〜が〜」

ニヤリとした世理子は言った。

「じゃあ、ワタシが聞いてみる。オバとして」

「・・・・」

「ぜひ、聞いてみたいわ!」

「あんまり興味本位なこと言わないでよ」

「おねぇちゃんだって、興味あるんでしょ?!」

「興味っていうんじゃなくて・・・ただ心配なのよ」

「同じことよ。聞く内容は」

「それはまぁ、そうかもしれないけれど・・・」

「早く帰ってこないかなぁ・・・良樹のヤツ」

うつむく姉を後目に世理子は、ひたすらニヤニヤしていた。


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