THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行4 11/14


■妻はヤンママ

「どなたかしら?」

店内を見渡す宮田と木下の元へ、さっきの娘と手をつないだ女性がやってきた。
長い髪を金髪に染め、全身黒ずくめ。長く伸ばした爪が虹色に光っている。

振り返った宮田は、それが木下の妻であることがすぐにわかった。
結婚式で一度見た程度だが、あの時から派手さは変わっていない。いや、むしろあの時以上だ。

「おお、宮田だよ。幼なじみの。結婚式の時にほら、スピーチしてもらったろ?」

木下は娘を見る時とは、うって変わった、やや不機嫌そうな表情で、そう答えた。

「アラそうでしたっけ〜? ゴメンなさいねぇ、忘れっぽくてぇ。わざわざ、すいません。こんなお店にまで来ていただいてぇ。まったくねぇ。いくら場所のいいところにお店を出せたからって、本当に儲かるのかしらってぇ〜」

話し方は、まるで山の手の奥様だが、決して上品に見えないのが宮田には不思議だった。

「でも、木下君は昔から、ウマイから」

宮田は、そう口にした直後に「商売が」という主語をつけるべきだったと感じた。
しかし、そんなことはお構いなしで、木下の妻は話を続けようとしている。
そこへ木下が割り込んだ。

「もう、いいからさ。あっち行ってろよ」

「アラ?! それじゃあ、ごめんあそばせ」

ごめんあそばせ・・・この言葉を本当に言う人間を宮田は生まれて初めて見た。
木下の妻と娘が奥へ入って行ったのを確認して、宮田は木下に尋ねた。

「しかし、木下。ヘンな話だけど・・・本当に儲かるのか? こういう商売」

「まぁ、店じゃあそんなに儲けはないな。だけど、ここはあくまでもアンテナショップだからな、いろいろ出してみて、売れそうなヤツをまた別なルートに乗せてくわけよ・・・」

確かに、いろいろな物が置いてある。
あらためて店内をまわった宮田は、奥のカウンターのわきに大変な物を見つけてしまった。


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