THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行4 10/14


■インポート・ショップ

翌日の日曜日も朝からさわやかな秋晴れにめぐまれた。
しかし、宮田家の中の空気は、どんよりと曇ったままだ。

良樹は今日も朝早くから、行き先も告げずに出かけてしまった。

買い物は昨日のうちに済ませてしまったし、残された夫婦も今日は特別に出かけるところもない。
妻は朝から、ひとりでお茶を飲んではタメ息ばかりついている。

宮田としては、何とかこの重苦しい空気から逃れたい気持ちがあった。
ふと、目についたのは木下から届いたハガキだ。
店は横浜・・・そんなに遠くない。
ただし、休日だから、車はやめて電車の方がいいだろう。

宮田はハガキを見せながら妻に「いっしょに行ってみるか?」と言ってみた。

妻は、ろくにハガキを見ようともせずにささやいた。

「一人でいらしてください。・・・悪いけど私、木下さんあんまり好きじゃないし。それに・・・何か疲れちゃって・・・」

「それじゃあ、まぁ、ひとりでゆっくり休んでいなさい」と言い残し、宮田は家を出た。

木下の店は、新しくオープンしたばかりの大型ショッピングモールの一角にあった。

駅からショッピングモールへと続く遊歩道は、いったいどこからこんなに人が沸いて出てきたんだろうと思うくらい、ごった返している。

しかし、大型店のあるメインの通りを抜けて、小さな店が集まる裏手の道に入ると、それほどの混雑はない。
木下の店は、そのうちのひとつだ。

ひと口で言えば、輸入雑貨の店。
入口の前には洋服がかけてあったり、ちょっと風変わりな家具や装飾品がところ狭しと並んでいる。

遠巻きに様子をうかがいながら近づいて行くと、ちょうど中から木下が客を送って出てきた。

「よう、宮! 来てくれたか。まぁ入れよ」

「おお」

店の中は、ますます雑多だった。
その雑多な商品の間から、5歳くらいの女の子が走り出してきた。

「あぶないぞぉ」

宮田がややおどけた感じでそう言うと、女の子はキッと宮田を睨んだ。

「おい、リナ。この人はパパのお友達だ。挨拶しなさい」

「こんにちわ」

宮田はニコニコしながら、しゃがみこんで木下の娘に挨拶した。
しかし、まだ腰が痛い。

「こんにちわ」

娘も挨拶を返したが、ニコリともしないで、さっと行ってしまった。

「ハハ、可愛いだろう?! 宮んとこは確か男の子だったよな。可愛いぞ! 女の子は」

木下は満身の笑みをうかべながら娘の後ろ姿を追っている。
宮田は腰に手を当てながら、悲痛に満ちた顔つきでようやく立ち上がることができた。


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