THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行4 7/14


■青いハッピのお調子者

「ウン、いゃあ・・・別に」

両手を後ろに組んだ宮田は、店員に呼び止められて仕方なく立ち止まった・・・という気持ちでポーズをとった。

「今はどのメーカーの携帯をお使いで?」

丸い目の店員は、宮田の顔をのぞき込んだ。

「今はねぇ・・・使ってないんだ」

その言葉を聞くやいなや、店員は大げさにリアクションをとりながら言った。

「それは、いけません。ね? 今、電話はひとり一台の時代でしょ? ね? 高校生だって、みんな持ってますよ」

「・・・そのようだね」

宮田は、妻の方へ視線を移した。
店員は、たたみかけるように話を続ける。

「お仕事だって、グーンと便利になるし、ね?」

と、妻を見る宮田の視線に気づいた店員は

「・・・お連れさま?」

「うん」

「お若い女性で・・・ひょっとしてコレ?」

と小指を立てて、ニッと笑った。

思わずドキッとした宮田は必要以上に赤面し

「そんなんじゃないよ、はは」

と答えたが、ヘンに嬉しくもあった。
妻が若く見られたことへの喜びなのか、それとも・・・。

調子にのった店員は、なおもハシャいで見せた。

「ニクイね。・・・ほぉ、トースターですか? 愛の巣用に? ニクイね! ニクイね!」

「ははは」

「・・・じゃあ、やっぱり携帯持たなきゃあ、ね? いろいろとナイショ話もあるでしょ、ね?」

そこへ妻が1,980円のトースターを抱えてやって来た。


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