THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行4 5/14


■良樹の彼女

「違うって何がです?」

宮田は言葉につまった。
本当のことを言うためには、今の自分の思いを明確にしなければならない。
しかし、それはできる話ではない。妻に対してはもちろん、自分に対しても。

「何の?・・・何の話だっけ?」

つじつまの合わない返答ではあったが、とにかく妻としては夫に聞いてほしいことがあったので、そのまま自分の話を続けることにした。

「携帯電話忘れていった高校生の女の子がいたじゃないですか・・・」

「おお、良樹の年上の彼女」

「やめてくださいよ彼女だなんて。良樹はまだ中学生なんですから」

「まだ中学生って・・・。中学生だろ? りっぱなオトナ料金だ」

少しキッとした顔つきで妻は言った。

「あなた。真剣に聞いてくださいな。自分の息子のことなんですから」

宮田も少しキッとして答えた。

「真剣に聞いてるって。・・・で、その彼女・・・女の子がどうかしたのか?」

「今日は朝から、その子に会いに行ったみたいなんです・・・良樹」

宮田は内心、ちょっとだけニヤリとほくそ笑んだ。
やるじゃないか、我が息子・・・俺が中学生の時には、まだデートなんかしたことはなかった。

うつむいたままの妻に余裕を持って宮田は話しかけた。

「そんなに心配することないって・・・」

「でも受験生だし」

「だって今週は頑張って試験勉強してたんだろ?! いいじゃないか、試験明けの休みの時くらい・・・」

「それは、そうですけど・・・。相手は年上ですし・・・ヘンに引っぱられなきゃいいなと・・・」

年上・・・その言葉にはキュンとするモノをかつては宮田も感じた経験がある。
しかし、この年になると・・・やっぱり年下がいい。

「大丈夫だって! だいたい朝早くから出かけていくなんて、健康的でいいじゃないか」

「・・・・」

その時、電気屋のシャッターがガラガラと開いた。


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