THE THEATER OF DIGITAKE 初めての不倫旅行4 3/14 |
■休日のダンドリー 妻が見ていたのは、同じチラシの少し違う場所だった。 「トースター1,980円。・・・うちのトースター、このところ調子悪くて。何かコゲくさいし・・・」 振り返るなり宮田は言った。 「よし、買いに行こう! それは、すぐに新しいのに買い換えなきゃダメだ」 一瞬キョトンとした妻は、流し場に向かって宮田の朝食を準備しはじめた。 宮田は、まだ熱心にチラシを見ている。 「今何時だ? ・・・9時20分。この店のオープンは・・・10時か。40分しかないな」 妻の方へ目をやると冷蔵庫から取り出したシャケを焼こうとしている。 「おいおい、朝メシなんか簡単でいいから・・・コーンフレークか何かで。それより急がないと売り切れちゃうぞ・・・ト、トースター」 背中ごしに妻が答える。 「大丈夫ですよ。そんなに急がなくたって・・・」 見かねた宮田は流し場に近づくなり、自分でコーンフレークの箱を取り出し始めた。 振り返った妻は不思議そうに宮田を見つめる。 その視線に気づいて、ふと手を止めた宮田は 「だって困るだろ? トースターが買えないと。ほら、メシはいいから、出かける準備をして! それに早く戻って来ないと雨が降って、干してる布団が困るし・・・。ほら、早く」 「・・・それじゃあ」 妻はようやく動き出した。 宮田の経験値から言えば、妻が動き出してから実際にドアを出るまでには、最短で13分かかる。 宮田自身は、まだ起き抜けのパジャマ姿だが、本気を出せば、着替えから車のエンジンをかけるまでに4分30秒あれば充分イケる。 出がけにトイレに行っても2分だから、残りの6分30秒以内にコーンフレークを食べ終わればいい。 宮田は再び電気屋のチラシを食い入るように見つめながら、コーンフレークをかき込んだ。 |