THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行4 2/14


■土曜日の朝

「あなた!」

妻の声に宮田は目を覚ました。
・・・やっぱり夢だった。

「あなた、お布団干させてくださいな」

「何時だ?」

寝ぼけマナコの宮田が答える。

「9時ですよ。もっと寝かせてあげたいんですけど、今週は天気が悪くてお布団干せなかったから・・・。今日はイイ天気よ」

・・・9時。いつもなら会社に着いている時間だ。
充分寝たと宮田は思った。そう思ったらいっぺんに目が覚めてしまった。
だけど、できれば今の夢の続きはみたかった。

洗面所で顔を洗って・・・朝も5回うがいをするのが宮田の習慣だ。

食卓についた宮田は朝刊を開きながら、布団を抱えていったり来たりしている妻に尋ねた。

「良樹は? まだ寝てるのか?」

「・・・いいえ」

と言って布団を抱えながら物干しのある小さな裏庭に出た妻は、宮田のわきを通りながら

「それが、もう出かけたんですよ」

と言ってまた寝室に入って行った。

「珍しいじゃないか?! こんな休みの日に朝から出かけるなんて」

「ええ」

と言いながら枕を2つ持った妻は、また裏庭に向かう。

「どこ行ったんだ?」

新聞をめくりながら宮田は聞いた。
妻からの返事はなかなか戻って来ない。
聞こえなかったのか?・・・と思った宮田がテーブルの上に新聞を置くと、折り込みのチラシが束になってるのに気づいた。

『アイアイ電器 本日秋のスペシャルセール』

見るともなしにチラシに目をやった宮田は次の瞬間、そのチラシに釘付けになった。

『話題の携帯電話が、なんと100円!! 先着100名様限り』

思わずチラシを手にとった宮田は、つぶやいた。
100円? 10,000円の間違いじゃないのか?

「安いですね」

いつの間にか、自分のすぐ背後に来ていた妻の声に宮田はドキッとした。


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