THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行3 9/9


■妻の直感

寝室に入ると妻はすでに横になっていた。
夫がベッドに入る音に目を開いた妻が言った。

「・・・どうすればいいのかしら?」

「何が?」

「何がって・・・良樹のことに決まってるじゃない」

「別にいいんじゃないか・・・男の子だし・・・」

「そんなぁ」

宮田は、布団をはらいのけてベッドの上にアグラをかくと、隣の布団から目と鼻だけを出してこちらを見ている妻に向かって言った。

「ボクだって中学生の頃を思い出してみると・・・そりゃあ、いろいろとやったモンさ。とくに不良というわけじゃなかったけどね。・・・みんな、そうしてオトナになるんだ」

妻は黙って夫を見ている。

「実は今日、会社の下でバッタリ木下に会ってね・・・」

「木下さんって・・・あの若い奥さんをもらった?」

「そう、その木下。・・・で、ヤツとちょっと飲んでたんだ。そしたら昔のことをいろいろと思い出してね」

夫のやさしい表情を見て、やや不安から離れた感じの妻は、自分もゆっくりと上体を起こすと、よれたフトンの先を見ながら言った。

「・・・そうかもしれないわね。でも私、女子校だったし・・・男兄弟もいないから、わからないことが多いわ」

「ボクらの息子じゃないか・・・大丈夫だって・・・。ガールフレンドもなかなか律儀な女の子みたいだし」

ようやく笑みをうかべた妻は、やがて夫の方を見ると尋ねた。

「元気でした?・・・木下さん?!」

「ああ。スーパーカーなんか乗っちゃって、なかなか羽振りも良さそうだったよ」

夫は笑いながら、そう言った。
妻は、再び表情を堅くしてつぶやいた。

「・・・でも私、木下さんて、どうも好きになれないタイプだわ」

「・・・?!」

「・・・なんか、不倫でもしてそうなんだもの・・・」

突然、無表情になった宮田は

「さぁ、寝よう」

と言うと、サッサと自分の布団に潜り込んだ。

こうして宮田は、今夜も悪夢と格闘することになった。

・・・be continue.

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