THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行3 2/9


■宿敵・OL3人組

昼休みになったら、とりあえず三村に声をかけてみよう・・・と思いつつ、過剰なまでに周囲の目を気にしていた宮田は、とうとうその目的を果たせぬまま仕事に追われていた。

いつもと変わらない社内の様子・・・と宮田は思っていたが、実際には宮田の眼鏡がいつもと違うことに気づいている者がいないわけではない。

三村のほかにいる3人の課のOLたちは、仕事そっちのけで噂話に花を咲かせている。

「ねぇねぇ見たぁ? 宮田課長の眼鏡」

「見た見た。銀ブチがベッコウになってるヤツでしょ?」

「なんか、ダサーって感じ」

「どうしちゃったのかしら、中年が今さら色気づいちゃって・・・キモチわるー」

その声は背中合わせに座ってパソコンに向かっている三村の耳にも届いてきた。
ふとキーボードを打つ三村の手が止まった。

私は知っている・・・景色のいいあの場所で、課長が眼鏡を落としてしまったこと・・・。
私が背中なんか叩いたから・・・。

と、その時、ポンと三村の肩を軽く叩く者がいた。
同じ課の若手男性社員、柳俊雄である。

「三村クン、3時だよ。悪いけど、みんなにお茶入れてくれるかなぁ?」

「は、はい」

三村がパソコンの前を離れると、それを目で追った柳は、忙しそうなフリのOL3人組に向かって言った。

「おまえら、いつまで同じことやってんだぁ?」

負けずに言い返す3人組。

「いいんですかぁ柳さん? 営業がこんな早い時間に会社に戻ってきちゃってぇ?」

柳は大きく咳払いをすると、自分の席について、客先に電話をかけはじめた。


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