THE THEATER OF DIGITAKE 初めての不倫旅行2 6/8 |
■ひとり息子の反抗 息子の部屋のドアの近くでは妻が目を真っ赤にして怒っている。 息子は奥の勉強机に向かって顔をそむけたままだ。 「どうした?!」 ズボンの前をはだけたままの宮田が妻に聞いた。 妻は息子の方をキッとにらんだまま、ベットのわきにあるガラスのテーブルを指さした。 そこには灰皿と缶ビールの空き缶が数本置かれていた。 息子の方へ歩み寄ろうとした宮田のズボンがズリ下がった。 立ち止まってズボンを上げながら宮田は息子に言った。 「良樹!! これは、どういうことだ? エ? おまえ、まだ中学生だろう?!」 息子は顔をそむけたままだ。 完全に頭に血がのぼった宮田は思い切り怒鳴った。 「良樹!! こっちを向け!」 そすがにビクッとした息子は、ゆっくりと振り返って言った。 「帰りに電話してくれればよ、かたづけておいたのに・・・」 「馬鹿野郎! そういうことじゃないだろ?! そういうことじゃ!!」 力んだ宮田のズボンが、また少し落ちた。 「情けないわよ、受験生だっていうのに・・・」 宮田の背後から、妻がふるえた声でつぶやく。 息子はその言葉を聞くやいなや、立ち上がって言った。 「その受験生の息子ほったらかして自分たちは遊んできたんだろ?! オレだって勝手にしてもいいじゃねぇか?!!」 妻が押し殺したような声で泣き出した。 宮田は自分とほぼ同じくらいの背丈になる息子の両肩を手で押さえながら言った。 「良樹!! お母さんに謝りなさい!」 息子は父から目をそむけた。 その瞬間、宮田は息子を殴り飛ばそうかと思ったが、スボンが落ちた。 両肩にかかった父の腕の力がゆるめられたのを知った息子は、再び椅子にすわって両 親に背中を見せた。 とりあえず、かがんでズボンをつかんだ宮田は、カーペットを見つめながら「本当に謝らなければならないのは自分だ」と思った。 背後からは妻のすすり泣く声が聞こえている。 しかし、こういう事態になっている以上、家長として何とかこの事態を収集しなければならない。 スボンのベルトを締め直しながら、思案をしている宮田に息子が背を向けたまま言った。 「そういえば留守中に電話があったよ・・・。三村っていう。会社の女の人から・・・若い」 「わざわざ若いなんて言うことないだろ?! 若いなんて」と思った宮田だが、ここは家長としてつとめて胸をはり、言った。 「とにかく明日は月曜日だ。もう早く寝なさい!!」 |
Next■ |