THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行2 4/8


■絶景のワナ・・・再び

宮田は仕方なく車を降りると、妻の元へと歩み寄った。

夫が車を降りてきたことを確認すると妻は大きく深呼吸をした。

「気持ちいいわね。・・・あなたも深呼吸してみなさいよ」

少し腰を引きながら崖の下をチラッと見た宮田は答えた。

「いや・・・深呼吸は・・・いい」

「まだ痛みますか? 頭」

「いやぁ、そうじゃなくて・・・」

妻は夫の視線を追って、足下の崖を見た。

「あなた・・・高所恐怖症でしたっけ?」

「・・・・」

「あら?」

崖の下を見た妻が目を細めた。

「あそこで何か光っているわ? 何かしら?」

風にゆれる杉の枝の上の方で、小さな金属が陽の光を反射してキラキラと瞬くように見える。
それは確かに昨日、宮田が落とした銀プチ眼鏡に違いなかった。

妻の言葉に、それを確認した宮田は一瞬息をのんだ。
ここでアレが自分の眼鏡だと気づかれてはマズイ。ここから宿まで、どうやって車を運転していったのか妻に尋ねられたら・・・万事休すだ。

「きっとアレだろ?! あの〜スナック菓子の袋か何か。いかんな自然を汚しちゃ! 実にいかん!! ホラ、見てごらんなさい、この偉大な自然を」

宮田はとっさにそう言うと、妻の肩に軽く手をそえて、妻の視線を遠くの山々へとうながした。
そして、

「さぁ、頭もだいぶ直って来たし、ここからはボクが運転しよう!」

そう言いながら、そのまま妻を車の方へと振り向かせた。


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