THE THEATER OF DIGITAKE
初めての不旅行2 2/8


■宮田負傷!

話し出そうとした宮田は、口を開いた状態で、そのまま止まって息をのんだ。
受話器からは、ややノイズがかった声が流れてくる。

「・・・ただ今、留守にしております。ご用の方は発信音の後、ご用件をお話ください。後ほど、こちらからご連絡させていただきます。では、どうぞ・・・」

留守だ。
とりあえず電話はしてみたものの、長話をしている場合ではない。
内心、留守電でよかった・・・という気持ちはなくもないが・・・さて、何て言おう?

思考をめぐらせていた宮田は、とりあえず答えを見つけた。
しかし「どうぞ・・・」というメッセージはあったものの、なかなか発信音が鳴らない。
どうした? この留守電。
テープが伸びているのか? それとも、かなり旧式のヤツなのか? 物を大切にする三村クンのことだ。やはり旧式の物を使っている可能性は高い。

物を大切にするのはいいことだ・・・だが、早くピーッって言ってくれないと、女房が戻ってきちゃうじゃないか。
宮田の額に再び汗がにじみ出してきた。

ピーッ!

「三村クン? ボクだ。・・・あ、宮田です。昨日は、すまなかったね。無事、帰り着いたかと思って、念のため電話をしたんだが・・・。また月曜日に。では」

宮田は静かに受話器を降ろした。
心臓の高鳴りは次第に落ち着いてきた・・・と、その時、フスマが開いた。

「あ〜、いいお湯でした」

全身から力を抜けていた宮田は、思わず後頭部を床柱に軽くぶつけた。

「早いねぇ、ずい分」

「さっと浴びてきただけですから・・・。アラ? あなた、また汗だくね、どうしたんです? 赤い顔して」

「いゃあ・・・ちょっと朝の柔軟運動をね」

そう言って立ち上がった宮田は、両腕を腰にあてると布団の上で勢いよく右足を振り上げて見せた。
すると布団がすべって、そのまま後ろに倒れ込み・・・今度は思いきり、後頭部を床柱にぶつけた。


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