THE THEATER OF DIGITAKE |
宮田浩一郎■長塚京三 |
宮田裕美子■田中 裕子 宮田 良樹■??? 三村しより■石田ゆり子 以上、作者による勝手な配役 |
■旅の宿 「課長・・・、わたし前から課長のこと・・・」 うつろな瞳で宮田を見据える三村しよりの手が浴衣の帯にかかった。 すでに首筋のあたりからは、湯にほてった肌が目にまぶしい。 「・・・いけない! 三村クン!! いけない!! 自分を大切にしなさい、自分を」 ふるえる口調で瞬きひとつできない宮田の両腕は、その口調よりもふるえていた。 ここで、この両腕を差し出したら俺は・・・! 宮田はハッとして飛び起きた。 と、そこはいつもの自分のベッド・・・ではなく、旅館の中だ。 夢から覚めきらない宮田は、さらに飛び上がって周囲を確認した。 開け放たれた窓のそばには浴衣姿の女性が腰を下ろしている。 「み、三村クン・・・」宮田が思わずそう言いかけた時、外を見ていた妻がクルリとこちらを振り向いた。 「あら、起きた? ・・・どうしたの? 汗びっしょりよ」 妻はそう言うと、タオル掛けに干していた手ぬぐいを取って夫に手渡した。 「い、いゃあ・・・ちょっと枕が合わなかったようで・・・」 「温泉でも浴びていらしたら?」 「あ、ああ。・・・君は浴びてきたの?」 「私もこれから行って来ようと思ってたところなんですけど・・・あんまり朝の空気が気持ちいいんで」 はだけた浴衣を整え、枕元の眼鏡を取ると、宮田は窓辺に立った。 「うん・・・いい空気だ」 遠くにかすんだ山並みを見ていた宮田の視線がちょっと下がった。 昨日、三村が運転してきてくれた車が止めてある。 妻の方を振り返った宮田は言った。 「君、先に温泉に行ってきなさい。ボクはもう少し景色を見てから行くから」 「そうですか。それじゃあ・・・」 手ぬぐいをつかんだ妻は部屋を出て行った。 妻が完全に見えなくなったことを確認した宮田は、鞄から手帳を取り出すと、やぶれんばかりのスピードでページをめくると、床の間に置いてある電話の受話器をつかんだ。 「み、み、み、三村・・・あった」 小声でつぶくと、ダイヤルをまわす。 「今時、ダイヤルかぁ?」ジ・ジ・ジと音を立てながら、番号をひとつまわす度に戻るダイヤルに宮田はイラだちを覚えた。 夕べ、自宅に電話をする時には感じなかったイラ立ちだ。 やがて受話器からは呼び出し音が聞こえてきた。 フスマの向こうのドアをチラチラと気にしながら宮田は身をかがめている。 ガチャ! 電話がつながった。 「・・・はい、三村です」 |
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